乾くるみの作品でござる。デビュー作らしい。
今さら断わり入れるのもなんだけど、ネタバレするので注意。面白かったよ。
あー、えーと。エロいです。言葉どおりの意味でエロいです。
ミッション系の全寮制女子高で起きた生徒の飛び降り自殺事件と謎の病死、別の場所で起こった夫婦殺害事件、
消えた胎児…。その女子高に通う生徒と腕利きの女探偵、二人の視点からそれらの事件の謎を紐解いていくというのが
大まかな話の流れ。
自殺した生徒の残した謎の言葉「ジャック」とは何なのか?…わりと真っ先に、それがディルドゥーだと思った僕は
脳味噌腐ってますか?真相は当たらずも遠からず、それでも「これがジャックよ」(パシーン)と来たときにはやはりヴヴったねー。
そりゃ色物作家呼ばわりもされるわ。あーおかしい。
いや、いいよこの作品。かなり興奮した。そういうのを期待してたわけじゃないんだけど。心をえぐられた。
「高橋×坂本」にもうドキドキです。甘酸っぱいです。シイちゃんが優子に接吻つかまつるところで既に達した。
そこから最後まで一気に読み切ってしまった。優子がシイちゃんを拒んだ時点では、どちらかというと
(親友を拒絶してしまったという後悔や困惑はあるものの)優子の方が立場が上だと思うんだけど、
その後偶然「ジャック」を手に入れたシイちゃんは
密かに親派を作り学内に親衛隊までできるようなカリスマ的存在に…。親友を拒絶してしまったことを負い目に感じ、
できることなら昔のような親友として仲直りしたいと考えつつも二人の間にできてしまった溝に懊悩とする優子。
そこに椎奈に篭絡され下僕となった上級生の口を通じ、優子も椎奈の親衛隊に入らないか、と伝えられるのですな。
「〜どんな顔をして、どんな風にして話したらいいのかわからないんです。…昔みたいにシイちゃん、とかって、呼びにくい
状況じゃないですか。…たとえば斉田さんなんかが…」「椎奈さま…ね?…だったらあなたもそう呼べば?」
ビクンビク〜ン。ブラボー!これがエロくなくて何がエロいんじゃっつー話よ、諸君。さあ、皆でシイちゃんコールだ!
シぃイぃちゃん!それっ、シぃイぃちゃん!シぃイぃちゃん!はいっ、シぃイぃちゃん!シぃイぃちゃん!わ〜〜〜!
キャー、椎奈さま〜!抱いて〜!私を犯して〜!
はあぁ、はあぁ…。いやあ、僕的にはしこたま興奮してるんだけど、伝わってない?エロいんだって、マジで。
伝達能力低くてすまんねぇ。まあ、いいや。気になった人は自分で読んでよ。でも、ここまで先の展開を知ってると
素直に感動できんかもね、このエロさに。つーわけで、まだこれ読んでない人は残念賞。
椎奈の身体に移る前にジャックの宿主だった麻里亜さまは、ジャックが離れると同時に死んじゃったんだけど、
それまで麻里亜の性奴として飼われていた生徒会役員の多くはジャックが椎奈に移ったことを知らず、
麻里亜の死後目立つ存在になっていた椎奈を疎ましく思い、反抗勢力を築いていがみあっていた。そんな彼女らが物語佳境で
椎奈の股間でいきり立つジャックを見た途端に揃って頭をたれるっちゅーシチュエーションも普通にエロいよね。
「頂戴じゃなくて、下さい、だろ。…言ってごらんなさい。椎奈さま、どうか下さい、って」。
エロ漫画とかだったら服従的なエロさや立場逆転的なエロさ、それに両性具有的なネタはそれこそ掃いて捨てるほど溢れかえってるけど、一見普通の推理小説の体裁をもってる本作で、
こんな被虐話を披露されるとは思わなかった。
まあ、しかし、やっぱりこの話は「シイちゃん×優子」の微妙な人間関係と純愛やね。「ジャック」というSF的な
設定と全寮制の女子高という閉鎖された空間だからこそ起こりうる人間ドラマが肝。無論そこを描きたいがための
考え抜かれた上での、構成なんだろうけどねえ。いやはや、絶妙ざます。
ところでこの作品、本書の帯などに「断言しよう。この結末はだれにも予測できない」と書いてあり、
実際終盤のどんでん返しがウリってことになってるらしいんだけど、そうした評論が指してる「結末」ってどれのことなんかなあ。
両性具有者と悪魔を結びつけた解釈なんてザラだと思うし、女探偵が依頼主の男に事件の真相を語ってる個所については
正直間延び感や蛇足を感じる。
「ジャック」が第2世代を残し、優子を基点として日本中にJの寄生範囲が拡大していく、そして行為に耽溺する優子と
凄腕女探偵…という最後のアングルもエロくないとは言わないけど、個人的には「驚天動地のラスト!」というよりは、
興ざめの部類に入るんだけど…。
だってね、ようやくシイちゃんと優子が結ばれたんだし、やっぱり二人には幸せになって欲しかったのよ。
かわいそうじゃん二人とも。シイちゃん死んでるんだぜ、女探偵とまぐわったって全然ハッピーじゃねーっての。
物語のラストは必ずハッピーエンドでなければならない論者ではないけども。
「ジャック」の設定は、そこまで派生しなくても僕はもう十分満足だったのさ。喋るな「ジャック」。
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