「秘密」と「淡い恋心」を物語の主軸に据えた作品を、先行する作品群の成功や失敗を踏まえてデジタルに創作してみようという試みです。「デジタルに」とは言っても、元となるデータのサンプリングには筆者自身の感情という極めて限定されたアナログな指針を用いていることを予め断っておきます。
まず「秘密」と「淡い恋心」を登場させるために必要不可欠な物語的要素を考えてみましょう。
と言っても、「秘密」と「淡い恋心」という呼称自体、既に一度筆者の分析を経た上で抽出された要素なので、このうえ更に文言を費やしてもあまり意味がありません。噛み砕いて言えば「淡い恋心を抱く人物」と抱かれる相手、そして「両者の間で秘密とされなければならない何か」。それらが決まれば物語は自然と秘めやかな恋心を追う展開となる、というわけです。
例: 『名探偵コナン』 コナン&蘭
秘密:コナンが失踪中の恋人・工藤新一であるということ
『からくり変化あかりミックス!』 あかり&高野坂
秘密:人気アイドルまろんが小学3年生雛型あかりの変身した姿だということ
『ミントな僕ら』 のえる&佐々、のえる&未有
秘密:のえるが実は男だということ
秘密とされるべき事柄が何なのか。問題の多くはここに集約されます。
根拠も希薄で乱暴な手法ですが、先行する事例から物語の核となる秘密の種類を大雑把に分類するところから、最大公約数たる「秘密」を探っていきたいと思います。当然、これらの分類は不完全であったり、結果的に間違っていることもあると思いますが、考察を進めるにあたっての叩き台として見ていただければ幸いです。
1.性別の詐称
例) 少女少年シリーズ、ミントな僕ら、花ざかりの君たちへ、など
2.年齢の詐称
例) からくり変化あかりミックス!、おとなにナッツ、など
3.変装(別人への成りすまし、一人二役)
例) 少女少年IV、ライバルはキュートBOY、苺チャンネル、など
4.同性愛
例) 人造少女、カンチガイの土曜日、など
5.敵対
例) 怪盗セイントテール、キャッツ・アイ、BASARA、など
中には変則的なケースもありますが、これらの秘密にはある共通項が存在します。
それはこれらの秘密の内容が「淡い恋心」を素直に打ち明けられない原因となっていること、
或いは恋の成就に際し障害となることが予見されていることです。
秘密を持った二人の恋が片想いであったり、未発達なものであるのは必然と言えるでしょう。
秘密の露呈は二人の恋に結末や急転をもたらし、それを機に物語は終焉を迎えるのです。
この視点で捉える限り、「秘密」は物語の動機であることを止め、「淡い恋心」を
描いた物語を支援する道具としての役割にその身を置きます。「秘密」と「淡い恋心」は、
互いに引き付けあい支えあう連星のような存在だということができるのです。
以上を踏まえた上で、タイプ別に分類したそれぞれの秘密が具える物語上のメリット・
デメリットなどを見ていきます。そして、最終的には、どういった秘密を設定するのが
物語的に一番「おいしい」のか、といったところまで提示・提案できれば良いと考えています。