本読んでたりすると、たまに何かの例えで、片方の目だけだと遠近感がつかめないのと同様に……云々、っていう
説明があるじゃん。それって普通の人だとすんなりふむふむと納得できる例え話なのかねぇ。
いままでそういうのって端から理解しようとせずに曖昧にしたまま読み飛ばしたり聞き流したりしてたんだけど、
もしかしたら思ってる以上に重要なことなのかもしれない。
なにせ、自我に芽生えてこのかた世界を両の目で見たことがないからさ。ヘレン・ケラーに物の色を
理解させられないのと同様に、そもそも僕は遠近感という感覚を理解することができないのではないだろうか。
いや、今後いくら努力しても不可能ということに愕然とするということでなく、
生れてからこれまでの間、多くの人間に当然備わっている遠近感という概念を享受していなかったということ。
または、享受できていないということを覚悟していなかったことにいささか狼狽を覚えた。
遠近感って実際どういう感覚なんだろう?片目で見たときと両目で見たとき、一体何がどう違うだろう?
いままでてっきり皆と同じ世界を同じように捉えているものとばかり思ってたよ。
今も眼前には僕の想像だにできない全く異質の世界が拡がっているのだろうか。
全て仮像に過ぎない、というヒュームの言葉が身にしみて実感されるね。自分に備わったハンデが持つ意味を
一元的にしか捉えてられていませんでした。そんなことに今さら気付くとは、まったくもって筋金入りの粗忽者ですよ。
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